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セルフに恋して(完全版)

1

おりり さんが退場しました。

☆きらら☆ さんが入場しました。

+NADECO+ さんが入場しました。

Mみん さんが入場しました。

翔くんは俺の嫁 さんが退場しました。

Mみん さんが退場しました。

ズバボン@柏木 さんが入場しました。

720saki さんが入場しました。

ヾ(・∀・。)ノダ-!! さんが退場しました。

Catania2010 さんが入場しました

ariari☆ さんが退場しました。

おりり さんが入場しました。

ここはセルフ露天―――

セルフを売りたい人と買いたい人が集う場所。

石畳の縁を縫うように服を並べる職人たち。

その隙間を伝うように露天を渡り歩く住人たち。

テンポよく流れるログが今の活気を表している。

おりり さんが退場しました。

catania2010 さんが退場しました

さらっさらのさらチャア☆ティ さんが入場しました。

+++梅+++ さんが入場しました。

吟じます♪ さんが入場しました。

店を出して早2時間。

期待を胸に泰然と画面を眺めているけれど

僕の服はまったく売れる気配がなかった。

WizWizの淡い鴇色の空から舞い降りる風が冷たい。

おりり さんが入場しました。

720saki さんが退場しました。

おりり さんが退場しました。

うっかり玉子 さんが入場しました。

さらっさらのさらチャア☆ティ さんが退場しました。

momimon2nd さんが入場しました。

☆きらら☆> : ’あの’

っふにゃ さんが入場しました。

ンスー(鼻息) さんが入場しました。

うっかり玉子さんの前には人だかりができている。

店に並べた商品が光の速さで売れていく。

一方で僕の前には人が立つことすらない。

避けられているのではないかと錯覚する。

っふにゃ さんが退場しました。

♪吟じます さんが退場しました。

おりり さんが入場しました。

☆きらら☆> : ’あのー、すいません’

色違いのログに気がついて背筋を伸ばした。

慌てて声の主を捜すと、背後に黒髪のエリカが立っている。

雨音の連打のようにキーボードを叩く。

僕>☆きらら☆ : ’はい!自分ですか?’

おりり さんが退場しました。

☆きらら☆> : ’そうですw言っておこうと思って…’

闇たまご(裏) さんが入場しました。

僕>☆きらら☆ : ’は、はい’

おりり さんが入場しました。

ズバボン@柏木 さんが退場しました。

部屋とYシャツとミルク さんが入場しました。

*アロー* さんが入場しました。

☆きらら☆> : ’セルフが白いです^^;’

これが、僕と☆きらら☆との出会いだった。

僕はお礼を言い、マイルームにもぐりこんだ。

完成直後のセルフは白くなりやすいと聞く。

改めて服(セルフ)を着直してみる。

これで見えるようになっているといいけれど。

☆きらら☆さんに聞いてみよう。

鴇色のセルフ露天へ戻る。

僕>☆きらら☆ : ’見えてますか?’

黒髪のエリカは立ち上がり

羽ばたくように、僕の横にきた。

☆きらら☆> : ’バッチリ見えてます’

僕>☆きらら☆ : ’よかった、ありがとう!’

☆きらら☆> : ’あなたのセルフ’

☆きらら☆> : ’色がキレイで見ていて気持ちが明るくなる感じ^^’

僕>☆きらら☆ : ’007_3  ’

僕>☆きらら☆ : ’うわあ、嬉しいです’

褒められて、心が躍る。

☆きらら☆> : ’でも私’

黒髪のエリカは腰に手をあてた。

☆きらら☆> : ’うっかり玉子さんの色使いが一番好き^^’

ファンなんだろう。

彼女はうっかり玉子さんの"どピンクパーカー"を着用していた。

うっかり玉子さんの作品は本当に人気が高い。

今も彼のまわりに多くの人だかりができている。

僕>☆きらら☆ : ’いいですよね!僕もその服持ってます020_3  ’

僕>☆きらら☆ : ’だけど…’

証拠を示すようにマイルームに入り、

"どピンクパーカー"に着替えて露天に戻る。

2人のエリカが同じ格好で横並びになる。

このパーカーは立体にしか見えないし

色使いも本当に素晴らしいと思う。

だけど…

憧れであり、目標であり…

僕は高らかに宣言するように言い放った。

僕 : ’僕はいつかうっかり玉子さんを超えたいと思っているんだ’

☆きらら☆> : ’ちょ^^;’

彼女の動揺が僕の決意によるものではないことは明白だった。

一様に凍り付くWizWizの鴇色の空。

露天のみんなも動きを止めたような気がした。

僕のログの色、あれ。

僕 : ’あ、誤爆・・・’

うっかり玉子さんがこの誤爆を見ていないことを願う。

でも・・・多くの住人が目撃したことだろう。

☆きらら☆> : ’その気持ち、素敵だと思います^^’

擁護するように笑顔をつくる黒髪のエリカ。

そのやさしさに救われる。カメラをまわして、

彼女が着ているどピンクパーカーを大写しにする。

うっかり玉子さんの作品。

心を撫でるようなpink。

陰影すら美しいパーカー。

同じ原本から作られた服なのに・・・

彼の服は輝いている。生きている。

本当に彼の作品を超えられるのだろうか。

コーヒーカップが重みを増して、僕の指に深く沈む。

☆きらら☆> : ’玉子さんの作品はね’

☆きらら☆> : ’実際お店に並んでいても「着たいな」って思える服なの’

僕の迷いを察したかのようにささやく彼女。

たしかに、実際に着用している女性がいてもおかしくない。

(胸を強調しているシリーズはともかくとして)

☆きらら☆> : ’あなたのセルフ、色はとてもキレイだけど・・・’

すこし間があった。

☆きらら☆> : ’リアリティが薄いと思います’

手厳しいけど正しい。

写真や想像を繋ぎ合わせて描いている僕の服。

ゲームの衣装にリアリティなんて意識していなかった。

見た目が全てだと思っていた。

☆きらら☆> : ’色も見た目も大事。でもそれ以上に’

☆きらら☆> : ’服の構造や質感がしっかりしているセルフに’

☆きらら☆> : ’私は惹かれてしまいます(*^_^*)’

賑わう休日のアウトレットモール。

鶯色のニットキャップを目深に被り、男一人で訪れた僕。

リアリティを出すためには、本物をよく見なくてはならない。

そう考えた僕は"彼女へのプレゼント選び"を装うことにした。

真剣に選別している女性客の合間を縫って服をのぞきこむ。

デザインや配色を深く見つめる。

生地を撫でて感触を手に残す。

構造を頭に叩き込む。

見ている内にいろいろなことがわかってきた。

素材によって影の見え方や深さが違うこと。

服は単色ではないこと。

光の三原色を意識する必要があること。

実際、手のひらをよく見てみると肌色一色ではない。

起伏に応じた影と刻み込まれた皺の溝。

肌色・朱色・エクルベイジュが折り重なっている。

光にかざして見ると、赤・緑・青・黄色・紫の色の粒が

星屑のように散らばっている。

普通は意識しないけど、目に見える全ての色は

光の三原色(に伴う色)で構成されているのだ。

…これをセルフに応用できないか?

肌色も服の色も、光りを感じる明るいセルフ。

☆きらら☆さんは構造のリアリティを求めた。

形は誰にでも踏襲できるだろう。

しかし枠の決まっているセルフ。

できることは限られている。

では枠の中でできる最大のリアリティは何か。

答えは存在感。僕は光りを受ける服の、

存在のリアリティを追求することにした。

更にブランド品を眺めていて気づいた。

ブランドには絶対に譲れない拘りがある。

配色、デザイン、マークの配置等、定められている。

決して自由に創られているのではない。

"ブランド"という枠の中で著しい個性を染め出している。

つまりブランドは、枠があるから光るのだ。

セルフの不自由な原本は、光らせることができる枠なのだ。

そして試行錯誤の末、僕は新作セルフを完成させた。

パーカーでもジャージでもない普通のTシャツ。

"Light"と名付けた。

色のベタ塗りは一切していない。

光の三原色の色を要所に散らせている。

数ドットをぼかしているので

意識しないとわからない感覚的なもの。

一見すると、シンプルな普通のTシャツ。

だけど、この作品の放つ"そこにある感"は

斬新で輝いていると自負できた。

形ではなく、存在感のリアリティを追求したのだ。

今までにないものを作った手応えを感じる。

さっそくセルフ露天に向かった。

・・・

しばらく露天してみたが、まったく売れない。

そもそも足を停めてもらえない。

シンプルなシャツにしか見えないのだろう。

まして名前も売れていない僕のことを注視する人もいない。

自己満足作品になってしまったかな・・・

顔の筋肉が強張り、自嘲ぎみの表情が出てくる。

完成直後は妙な孤独感がつきまとうものだけど

自信があっただけに一層寂しく感じた。

僕: ’僕はいつかうっかり玉子さんを超えたいと思っているんだ!’

あんな☆きらら☆さんに大見栄切って、誤爆して・・・

つくってきた作品はこれですよ、と。

露天を畳んで出直そうと思った。

でも・・・これ以上恥をさらしたって何も変わらないし、

とにかく☆きらら☆さんに見てもらいたかった。

コピーを置いてもう少し放置しておこう。

店名に「放置中」と書き入れて、僕は席を外した。

放置から戻ると、ベビーブルーの四角い表示が

MYショップの売り切れを示して浮かんでいる。

売れている・・・

ウィンドウを引っ込める。

僕の周りに人だかりが出来ていた。

背後に、見覚えのある黒髪のエリカ。

僕>☆きらら☆ : ’あっ、こんばんわ’ 

彼女は立ち上がった。

☆きらら☆> : ’こんばんわ^^’

☆きらら☆> : ’待っていたのよwそのセルフ’

☆きらら☆> : ’とってもキレイで素敵(*゚ー゚*)’

☆きらら☆> : ’でも先に誰かに買われてしまって・・・’

畳み掛けるように彼女は続けた。

☆きらら☆> : ’ぜひ売ってもらえませんか?それに・・・’

☆きらら☆> : ’みんな待っているみたい’

実際、露天をはじめたときが嘘のような状況だった。

寝転んだり座ったり・・・思い思いの格好で

僕の動向を見つめている住人たち。

こんな風に注目してもらうのはもちろん初めて。

嬉しさと戸惑いが入り交じる。

僕>☆きらら☆ : ’すぐつくります!’

マイルームに駆け込む。

板前のようなマウス捌きでコピーを作成して戻って陳列。

おもちゃを掠め獲る猫のような速さで売れた。

☆きらら☆> : ’ありがとう!マネキンするね^^’

着替えて僕の横に立つ彼女。

"Light"に合わせたセンスのいいコーディネート。

気に入ってもらえたのだろう。

失っていた自信が戻ってくる。

更にコピーすると、つくった傍からすぐ売れた。

都度ぎこちなくお礼を返す。

皆喜んで帰っていく。

何だかうっかり玉子さんのようだった。

作っては売れて、作っては売れた。

☆きらら☆> : ’たくさん売れたねー!’

落ち着いたところで☆きらら☆さんが声をかけてくれた。

僕>☆きらら☆ : ’ほんと・・・びっくりです’

正直諦めかけていたので、まだ戸惑いが大きい。

僕>☆きらら☆ : ’☆きらら☆さんがマネキンしてくれたから005

エリカは目を細めた。

☆きらら☆> : ’2人で立っていれば、人が見に来てくれるかなぁって’

☆きらら☆> : ’一見シンプルで目立たないけれど’

☆きらら☆> : ’近くで見ればわかってもらえるセルフだと思ったの^^’

僕>☆きらら☆ : ’最初、人が見てくれなくて落ち込んでいたんです’

僕>☆きらら☆ : ’本当にありがとう’

☆きらら☆> : ’立っていただけよwでも嬉しい027

ハートマークに頬がゆるむ。

☆きらら☆> : ’きっともっと売れると思います。あ・・・’

☆きらら☆> : ’よかったらトモロクお願いしてもいいですか?’

モニターの前ですでにうなずいている自分。

僕>☆きらら☆ : ’もちろn’

噛んでる僕に笑う☆きらら☆さん。

彼女はもう一度"Light"の出来を褒め称えて、そして言った。

☆きらら☆> : ’うっかり玉子さんの次にお気に入りの服になりましたw’

その後、僕は"Light"と同じ要領で別のキャラのセルフを作成。

それぞれ好評を得た。

僕の名前が少しずつセルフ露天に浸透しているのを感じる。

時間が合うと必ず☆きらら☆さんがマネキンをしてくれた。

僕の青いアイコンと☆きらら☆さんの赤橙のアイコンが横に並ぶ。

端から見るとカップルのようだ、なんて。

その間、ちょっとした世間話をするようになった。

彼女は小さい頃から着せ替えが好きで、セルフはツボだったらしい。

自分で絵は描くのはムリなので購入専門。

ゴルフは名前だけのセミプロだそうだ。

こうやって彼女のことが少しずつわかってくるのは楽しい。

ときには話に夢中になりすぎて、セルフを補充するのも忘れて

露天で延々と話し続けていることもあった。

いつしか僕は、多くの人にセルフが売れることよりも

彼女にとって一番のセルフを描くことが目標になっていた。

彼女に褒められたい。

彼女に認められたい。

彼女に着てもらいたい。

いまや僕にとってセルフは、僕と彼女をつなぐ手段になっていた。

しかし彼女の一番になるためには…

うっかり玉子さんを超えなければならない。

僕は再びアウトレットモールに足を運んだ。

玉子さんを超えるセルフをつくるためのヒントがほしかった。

眺めていた中で見つけたひとつの服。

心躍るデザイン。

丁寧で愛のある縫製。

シンプルだが絶妙に配されたライン。

惹きこまれる色彩。

その服の前から離れられなかった。

記憶に留めるべく、何度も触って確かめる。

あまりにも理想的で本能を揺さぶる。

とてもいい。

もう記憶に留めるだけでは満足できなかった。

これはほしい!

「ありがとうございます♪」

プレゼント用で…と言って購入することにした。

手元に置いて、この服を描いてみたくなったのだ。

あげられるわけではないけどさ。

自嘲気味の僕に笑顔を映し込む店員。

手早く服を折り畳み、お洒落な袋に流し込む。

「あれ」

不意に肩を叩かれた。

振り向くと、斜めにキャップを被った青年が

斜めに僕をのぞき込んでいる。見覚えのある風貌。

バイト仲間だった。

彼の肩口から女の子が小さく顔をのぞかせている。

彼女だろうか。どことなく矢口真里に似ていた。

「やあ偶然」平静を装い返事を返す。

「へえ、洋服を買ってあげる彼女がいたんだ?」

ショップの袋を受け取る僕に、不審な表情の彼。

見られたくないところを目撃されたものだ。

「まあね。プレゼントしようと思って」

「今度紹介しろよ」

「機会があったら」

嘘をつくしかなかった。

セルフの参考にするため…なんて言えない。

説明しようもなかった。

その夜、彼から電話があった。

「あのさ、来月サッカー観に行かね?」

「サッカー?」

彼と彼女、知り合いのカップルの4人で観戦予定だったのだが

知り合いのカップルの都合がつかなくなり、チケットが余っているという。

彼女がいると知って、僕に白羽の矢が立ったのだ。

「彼女と一緒に来てほしくてさあ」

「…彼女に聞いてみないと」

実際いないのだが、とりあえず濁す。

ジッポを灯す音。

「お前の彼女、芸能人でいうと誰似?」

そもそも僕に彼女がいると信じていないのだろう。

粗が出るのを待っているのだ。そういうヤツだった。

嘘をつき通すしかない。

「AKB48の…名前忘れたけど1人に似ているかも」

あれだけ人数がいれば似ている顔もあるはず…。

我ながら素晴らしい回答だと思った。

「へえ…」

矢口真里似の彼女を持つ彼は、少し動揺したようだった。

ネット上で知り合っただけの☆きらら☆さんを

勝手に彼女として重ねはじめている自分。

次はアウトレットで購入した服を描こう。

あの素晴らしいデザインを"Light"の描き方で作成したら

絶対にいいセルフができると確信していた。

真っ先に☆きらら☆さんに見てもらおう。

そしてもし、うっかり玉子さんを超えたねと認めてもらえたら―

妄想しながら、僕はマウスを滑らせた。

衣装名を入力。

"Light Star ☆"

そして完成した新作セルフの名前。

☆きらら☆さんを意識して名付けた。

彼女と話すようになってから僕のパンヤ生活は変わった。

イベントをこなしたり、フリマを散策することより

ただ彼女と話すことが楽しかった。

年齢も性別も顔も住まいも知らない。

それでも僕の彼女に対する感情は"好き"なんだと思う。

喩えネット上の関係でも感じるものがある。

言葉遣い、雰囲気、間合い、動き、空気感。

僅かな情報の中で、確かに伝わってくる何か。

その何かを気のせいだと割り切れるだろうか。

☆きらら☆さんも僕に好意を寄せてくれている・・・

僕はそう信じていた。

描いた衣装を完成させますか?

はい。

セルフデザイン衣装をアップロード中

セルフデザイン衣装が出来上がりました。

セルフ完成直後は妙な虚脱感に襲われる。

もう修正はできない。後戻りはできない。

完成させた自分の作品は、自分の意志となるのだ。

そしてモニターが映し出すドットとデータの集合体。

無機質だけど通信ケーブルの向こうに人がいる。

☆きらら☆さんがいる。

光が伝わるように、僕の気持ちも伝えようと思う。

WizWizの鴇色の空の下に立つ。

メッセで声を掛けると、すぐに☆きらら☆さんがやってきた。

☆きらら☆> : ’こんばんわ^^’

☆きらら☆> : ’ってすごい・・・’

新作を見つけて、惑星のように羽ばたくエリカ。

Light Star ☆にやさしく、絡みつく視線。

巣に帰るように僕の横に着地。

彼女は判定を下した。

☆きらら☆> : ’とってもリアルで素敵!’

画面から彼女の興奮が伝わってくるようだった。

リアリティの薄さを指摘されていた僕のセルフ。

その弱点を覆す出来だと認めてもらえたのだ。

彼女は続けた。

☆きらら☆> : ’今まで見たセルフの中で一番かもしれない’

☆きらら☆> : ’気に入りました^^’

それは…僕が待ち望んでいた言葉だった。

一番。ついに僕はうっかり玉子さんを超えたのだ。

「やったあ」喜びを伝えると、エリカも嬉しそうに笑った。

☆きらら☆> : ’うふふ、実際にこんな服が売っていたらほしいもの!’

☆きらら☆> : ’またマネキンするからね^^’

☆きらら☆> : ’絶対に売れるわ!’

僕>☆きらら☆ : ’あの、きららさん’

☆きらら☆> : ’はい~’

僕>☆きらら☆ : ’☆きらら☆さんに一番だと言ってもらえたら’

僕>☆きらら☆ : ’伝えようと思っていたことがあって…’

☆きらら☆> : ’あら、何かしら^^’

僕は震えながらも大胆に打ち込んだ。

僕>☆きらら☆ : ’あなたが好きです’

☆きらら☆> : ’え?’

彼女は動揺していた。

急すぎたかもしれない。

でも完成させたセルフと同様、後戻りはできない。

自分の気持ちをのせて伝えるしかない。

僕>☆きらら☆ : ’すいません048

僕>☆きらら☆ : ’冗談ではなくて…’

僕はもう一度言った。

僕>☆きらら☆ : ’あなたが好きです’

僕>☆きらら☆ : ’恋人同士として並んで露天できたら嬉しい’

長い間があった。

☆きらら☆> : ’あの、ありがとう。気持ちはとても嬉しい。でもね、私’

☆きらら☆> : ’あなたのことを何も知らない。’

☆きらら☆さんは体を僕に向けた

☆きらら☆> : ’私はあなたを応援したくてマネキンしてました。’

☆きらら☆> : ’「うっかり玉子さんを超える!」って一生懸命だったから’

☆きらら☆> : ’あなたのセルフは好きだし話すのも楽しかった。’

☆きらら☆> : ’だけど、正直恋愛感情はなくて・・・’

腰に手を当てるエリカ。

☆きらら☆> : ’あなたを好きにはなれません。ごめんなさい’

僕は勘違いしていた。

毎日のように傍にいて、挨拶をして、チャットして。

露天で合流して肩を並べているうちに、

何だか付き合っているような気持ちになっていた。

いつもマネキンをしていてくれるし、

彼女も同じように思っていると勝手に確信していた。

でも僕は勘違いしていた。

彼女が恋していたのは僕ではなかった。

彼女はセルフに恋していたのだ。

その日以来、きららさんは僕の前から姿を消した。

彼女のアイコンはずっとオフラインの位置で燻っている。

間違いなく僕が原因だ・・・

前触れのない告白に驚いて、怖くなったのだろう。

もう僕のいる空間に居たくないのだ。

告白なんてしなければよかった。

思い上がって勘違いした僕がどうかしていた。

忘却の花を使いたい。時間を戻したかった。

セルフ露天に一人で立つ。

常連のデザイナーが定位置にくさびを降ろしている。

お客さんは疎らだが、うっかり玉子さんのまわりは

いつもと変わらぬ人だかり。

見回しても、もちろん彼女の姿はない。

店を出す。彼女が来ることはない。

一人佇む。オリエンタルブルーの空から星が滴る。

人はたくさんいるのに今の世界は静かで孤独。

あのとき・・・告白しなければ・・・

今日も隣でマネキンをしてくれていただろうか。

他愛もない話で笑い合っていられただろうか。

彼女を見なくなってから3週間。

あの日々はもう戻らないのだろうか。

もしまた会えても同じ関係になれるかわからない。

でもこのまま終わってしまうのはイヤだ。

何か手がかりがほしかったから、

きららさんと出会ったこの露天に立ち続けるしかなかった。

うっかり玉子> : ’おはよう’

不意に画面左下を染める色違いのログ。

・・・うっかり玉子さん!

放置露天で販売しながら、声を掛けてくれたようだった。

僕>うっかり玉子 : ’は、はい、こんばんは’

夜なのにおはようと言う彼に首をかしげながら

僕はすぐに返事を返した。

うっかり玉子> : ’いつもいる彼女、最近見ないね?’

彼女・・・きららさんのことだ。

彼女は玉子さんの常連でもあったから気になるのだろう。

どこに行ってしまったのか僕が知りたい。

でもパンヤ島以外での彼女を知る術を僕は知らない。

玉子さんは彼女のことを何か知っているだろうか?

僕>うっかり玉子 : ’居なくなってしまって、僕も心配しているんです’

僕>うっかり玉子 : ’玉子さんは彼女のこと知りませんか?’

すがる気持ちで聞いてみる。

うっかり玉子> : ’ごめんね。σ(・_・)は何も知らなくて。’

そうだよね・・・僕は肩を落とした。

玉子さんも直接彼女と関わっていたわけではないのだろう。

しかし彼はお店を閉めて、僕の傍に走ってきて囁いた。

うっかり玉子> : ’転売厨に聞いてみるといいかも’

僕>うっかり玉子 : ’転売厨??’

うっかり玉子> : ’そそ。彼らが何か知っているかもしれない’

意味がわからない。

転売厨と言えば、ハイエナのように安い出品を嗅ぎつけては

根こそぎ購入して、初心者に高く売りつける。

おおよそそんな存在だと僕は負のイメージを持っていた。

うっかり玉子> : ’彼らは情報通なんだよ。’

どういうことだろうか。

うっかり玉子> : ’パンヤ界で何が起きているのか彼らは把握している。’

うっかり玉子> : ’アイテムの需要と供給を探っているだけに見えるけど’

うっかり玉子> : ’実は露天で漏れているチャットを聞いて吸収している。’

うっかり玉子> : ’誰が仲良しとか、人気職人がどんなセルフ作っているかとか’

うっかり玉子> : ’彼氏とケンカしたとか、子どもが泣き止まないとか’

うっかり玉子> : ’どんな頻度でログインしているかとか・・・何でも!’

うっかり玉子> : ’彼らは頻繁に巡回することで多くの情報を得ているんだ’

確かにあれだけ毎日巡回していれば多くの事を知り得るのだろう。

景況を見て株を売買するように、パンヤ界の流行をリサーチして

商品が一番値上がりするタイミングを吟味しているのだ。

なるほど、そんな彼らならきららさんのことを何か知っているかもしれない。

僕>うっかり玉子 : ’聞いてみる価値がありそうです!’

少しでも手がかりが欲しかったので、これはありがたい情報だった。

うっかり玉子> : ’がんばって(・∀・)’

僕>うっかり玉子 : ’で、でもいざ転売厨といっても誰がそうなのか・・・’

うっかり玉子> : ’ログを見ていればすぐわかるよ( ̄ε ̄)b’

注意深く、流れるログを追ってみる。

おりり さんが退場しました。

改ぶんぶん さんが入場しました。

*rin* さんが入場しました。

おりり さんが入場しました。

おりり さんが退場しました。

寒椿 さんが退場しました。

改ぶんぶん さんが退場しました。

おりり さんが入場しました。

ピヨキチ♪ さんが入場しました。

シィィル さんが入場しました。

おりり さんが退場しました。

まっちゃ さんが入場しました

onei3 さんが退場しました。

おりり さんが入場しました。

僕>おりり : ’はじめまして、ちょっと話させてもらっていいですか??’

間違いないと思った人物に声をかけた。

ややあって、返事があった。

おりり> : ’あなたのエリカセルフは50着売れていますね’

おりり> : ’好きな胸のサイズはBからCの間ですね’

おりり> : ’21日前にフラれたようですね’

おりり> : ’で。何か用ですか?’

これは・・・期待できるかもしれない。

僕>おりり : ’☆きらら☆さんについて何か知りませんか?’

おりり> : ’知ってます’

僕>おりり : ’本当ですか!!’

思わずモニターの前で身を乗り出した。

BGMは霧となり、画面のログに僕の神経が射し込まれていく。

僕>おりり : ’彼女のこと教えてほしいんです’

おりり> : ’いいですよ’

転売厨は本当に何でも知っているのだ。

聞いてみて良かった。扉が開けた気がした

おりり> : ’で。いくら払ってもらえますか?’

えっ・・・?

おりり> : ’最低でも100万PPお願いします’

淡々と囁くおりりさん。

思いがけない要求に僕は動揺した。

レインボーピースリボンをつけたクー。

ビイドロのように淡く透けたターコイズブルーのカットソー。

シンプルながら存在感あるネイビーブルーのスカート。

そんな上下の可愛いセルフ姿とは裏腹に言うことは可愛くなかった。

おりり> : ’もしかして、タダで教えてもらおうとしたんですか?’

おりり> : ’私は巡回する時間を削ってあなたと話しているのです’

おりり> : ’その間の情報や売買で想定される私の損失は’

おりり> : ’最低でも100万PP。その補填ですよ’

感覚が違いすぎてコトバが出なかった。

彼らの商売は桁が違うのだ。

買い時、売り時によって儲けたり損したりするのだろう。

タイムイズマネー。恐ろしい世界。

おりり> : ’まあ。他のPC2台でサブ巡回させながら話してますがね’

それなら教えてくれてもいいのに・・・

暗澹たる気持ちになる。そんなにPP持っているわけがない。

貯めるしても時間がかかる。何枚セルフを売ればいいのか。

今から必死にがんばるか、諦めるか。

おりり> : ’返答がないならそろそろ行きますよ’

言うが早いか歩きだしたク-。

しかし・・・不意に足を停めて僕を見た。

おりり> : ’気が変わりました。あなたに教えましょう’

突然どうしたのだろう。

戸惑う僕にうっかり玉子さんから囁きが入る。

うっかり玉子> : ’σ(・_・)の新作セルフを最初に売ってあげるから’

うっかり玉子> : ’質問に答えてあげてほしい、と言っておいたよ( ̄ε ̄)b’

うっかり玉子> : ’きっと無茶な要求されてると思ってwww’

彼が裏から手を回してくれたのだ。

ありがたい!

最初にセルフを売る、ということが果たして100万PPの対価と

なりえるのかよくわからない。

でもおりりさんは了解したようだった。

まだ誰も着ていないという独占欲かもしれない。

裏の世界は複雑な基準があるのだろう。

僕>うっかり玉子 : ’ありがとうございます。おかげで質問できそうです005

お礼を述べて、あらためておりりさんに聞いてみる。

僕>おりり : ’☆きらら☆さんについて知っていることを教えて下さい’

おりり> : ’いいでしょう’

おりりさんは再び僕の前に来た。

おりり> : ’インしている時間帯は主に22:00~24:00’

おりり> : ’メインキャラはエリカ’

おりり> : ’キャンディクラブセットを愛用’

おりり> : ’使っているキャディはキューマ’

おりり> : ’好きな組み合わせは土方×銀時’

おりり> : ’ちなみに私はクー×エリカ一筋ですがね’

おりりさんの趣向は聞いていないとツッこみそうになったが抑えた。

おりり> : ’関東在住。女性。20~30代。セルフ収集が趣味’

おりり> : ’横浜Fマリノスのファン。好きな選手はラモン・ディアス’

ディアスって・・・初期すぎる。

意外にも年季の入ったサッカーファンのようだ。

バイト仲間に誘われているサッカーの試合。

まさにその横浜Fマリノスと浦和レッズの対戦カードなのだ。

もし仲直りできたら・・・

ムリかな・・・

おりり> : ’彼女は21日前から消息不明’

おりり> : ’彼女が居なくなる前によく出入りしていたのは’

おりり> : ’セルフ露天とプラベ2の部屋名『MDN』’

おりり> : ’以上。それではさようなら’

おりり さんが退場しました。

お礼を言う間もなくセルフ露天から消え去るおりりさん。

ターコイズブルーの残像。消えゆくチャットログ。

部屋の名前、しっかり刻み込んだ。

とても重要な情報だった。

早速プラベ2の部屋『MDN』に行ってみよう。

そこで彼女の"いま"を知っている人に会えるかもしれない。

やっと掴んだ手がかり。彼女につながることを信じて。

うっかり玉子さんに精一杯のお礼を述べて

僕はセルフ露天を出た。

ポンタの広場 [ プライベート ] > プライベート2

005  チャット   チャットルーム   MDN   1 H   2/10

ロビーに入ってすぐに見つけた。

非公開ルームではない。部屋には2人。

右クリックでルーム情報を開く。

女性アイコン 名前momimon2nd

女性アイコン 名前+NADECO+

『気軽にどうぞ』なんて部屋名だったとしても

いきなり飛び入るのは気が引ける。

まして『MDN』。普段入ることはないだろう。

でも今の僕は迷わなかった。

他の選択肢はない。

きっとここで何かがわかる。

僕は『MDN』に飛び込んだ。

そこはDeep Inferno9番ホール。

重々しく垂れ込める鉛丹色の空。

竜の爪痕のように痛々しく皹割れた地表。

せり上がった12角形のティインググラウンドに僕は現れた。

その12角形の隅で丸まっているネル2人。

僕 : はじめまして。こんばんわ!

挨拶する僕をネル達が上目遣いで見つめている。

+NADECO+ : こんばんわ(ノ∀`*)+゚

momimon2nd : 神は言っている。MDNにようこそ。

無視されなくてよかった。胸をなで下ろす。

突然入場した無礼を詫びて、僕は切り出した。

僕 : ☆きらら☆さんのことをご存じですか?

簡単に経緯を説明した。

セルフ露天で仲良くなったこと。

最近見かけないので心配で探していること。

この部屋によくいると聞いたので訪れたこと。

片方のネルが答えた。

+NADECO+ : ☆きらら☆はリア友だよwww

MDNはリア友だけが集まる部屋だったが

今はいろいろなフレが遊びにくるので

フリーにしていると教えてくれた。

+NADECO+ : ・・・って、あんたか!噂のセルフ職人!

噂?

☆きらら☆さんが僕のことを話していたのかもしれない。

勘違いされて・・・告白されて・・・

怖いからしばらくインしない・・・

きっとそう伝えているのだ。

苦しくなり、逃げ出したくなる。

何しろここまで追いかけてきていることが既にキモイ。

僕 : たぶんそのセルフ職人です。あの・・・

僕 : ☆きらら☆さんがインしなくなったのは僕のせいです。

僕 : 勘違いして、彼女にイヤな気持ちにさせてしまったと自覚しています。

僕 : ただ彼女に謝りたくてここに来ました。

僕 : 彼女に申し訳なかったと伝えてもらえないでしょうか。

彼女との関係を取り戻したい一心で訪れたけれど、

それ以前の問題だった。とにかく彼女に謝りたい。

また復帰してほしい。

全てを正直に話して、彼女に伝えてもらえたら・・・

+NADECO+ : へ?

立ち上がるネル。

+NADECO+ : なーんか☆きらら☆が話していたことと違うなぁ・・・

どういうことだろうか。

鉛丹色の空が静かにうねる。

記憶を伝うように彼女は言った。

+NADECO+ : あれは今から3週間前だったかな・・・

+NADECO+ : 彼女がMDNにやってきて

+NADECO+ : 「大好きなセルフ職人にひどいことを言ってしまった」

+NADECO+ : 「取り返しがつかない。もうインできない」

+NADECO+ : そう言って居なくなったんだよ。

僕 :えっ

僕はモニターの前で顔をあげた。

意外な彼女の言葉。「ひどいことを言ってしまった」

反芻する。あのときを思い返す。

☆きらら☆> : ’私はあなたを応援したくてマネキンしてました。’

☆きらら☆> : ’「うっかり玉子さんを超える!」って一生懸命だったから’

☆きらら☆> : ’あなたのセルフは好きだし話すのも楽しかった。’

☆きらら☆> : ’だけど恋愛感情はなくて・・・’

☆きらら☆> : ’ごめんなさい’

ひどいことなんて言われていない。

僕が勘違いしていただけ・・・

+NADECO+ : ・・・お互いに思い違いしてるみてぇだな022

+NADECO+ : 待ってろ、電話して聞いてやるよ。

思いがけない展開に心が揺れる。

お願いしますと頭を下げて2人のネルの横に座る。

Dive Into Volcanoが神秘的に流れている。

吹き上がり続ける火山。

熱波に揺られたように頭が熱い。

+NADECO+さんを待っている間、気になっていたことを聞いてみた。

僕 : momimon2ndさん、MDNって何かの略なんですか?

ややあって、返事があった。

momimon2nd : 問題ない。

+NADECO+ : ’いま来るってさ’

+NADECO+さんはそう言って部屋から退場した。

続けてmomimon2ndさんも光を蒔いて消える。

Deep Inferno9番ホールに残るのは僕1人となった。

+NADECO+ : ’2人でちゃんと話しなよ。大丈夫だ、問題ない。’

部屋の外からテレパシーのように差しこまれるメッセージ。

僕はお礼を言い、本当に来てくれることを願いながら

身を固くして火山の焔を目で追った。

☆きらら☆さんがログインしました。

画面上部に浮かぶ文字。インしてくれたのだ。

とにかく謝ろう。恋愛感情があったのは本当だけど・・・

彼女がそれを望んでいないのだから、せめて仲間として友達として

普通に話せる関係に戻りたい。以前のように。

☆きらら☆ さんが入場しました。

現れた黒髪のエリカ。

待ち望んだ姿だった。懐かしく愛おしい。

心が音を立てる。指が少し震える。

彼女の前に駆け寄る。

僕>☆きらら☆ : ’こんばんわ!’

☆きらら☆> : ’こんばんわ’

僕>☆きらら☆ : ’来てくれてありがとう。この前はごめんなさい’

☆きらら☆> : ’いえー、謝らないで’

画面から伝わる彼女の持つ雰囲気に僕は惹かれていったのだ。

モニタ上のアバターでしかないのに、なぜこうも心がざわめくのだろう。

でももう好きになってはいけない。

僕>☆きらら☆ : ’僕のせいで☆きらら☆さんがインできなくなったのだと思うと’

僕>☆きらら☆ : ’本当に申し訳なくて’

☆きらら☆> : ’・・・’

☆きらら☆> : ’そうね、あなたのせいね’

僕>☆きらら☆ : ’だからもうあんな事・・・好きだ、なんて言わないから’

僕>☆きらら☆ : ’また普通にインしてほしい。’

僕>☆きらら☆ : ’そして以前のように露天でチャットできたらと願ってます。’

ずっと伝えたかった言葉を紡いで貼りつけた。

☆きらら☆> : ’ありがとう^^’

笑顔の顔文字が沁みる。

許してもらえるのだろうか。

☆きらら☆> : ’でもね’

☆きらら☆> : ’あなたは謝らなくていいの。謝るのは私’

黒髪のエリカが僕を見る。

少し間があって彼女は言った。

☆きらら☆> : ’あのとき恋愛感情はないと思ったのは本当。’

☆きらら☆> : ’その後インせずに1人でいたら気づいたの。’

☆きらら☆> : ’あなたとの露天が、楽しくて幸せな時間だったことに。’

☆きらら☆> : ’私はあなたの新作にいつも驚かされて興奮したし、’

☆きらら☆> : ’あなたのまっすぐな感情や話し方が可愛くて、癒されていた。’

☆きらら☆> : ’なんだか自然に仲良くなったから日常になっていた。’

☆きらら☆> : ’そもそもネットでの恋愛なんて考えたことなかった。’

☆きらら☆> : ’でも私は、一人の異性として、あなたに惹かれていたみたい。’

思いがけない言葉に、コーヒーカップを掴もうとした僕の左手は空を切った。

☆きらら☆> : ’それなのに「恋愛感情ない」と言ってしまった自分がイヤで’

☆きらら☆> : ’あなたにあわせる顔がなくて。’

+NADECO+さんの言っていたお互いの思い違い・・・

僕は恋愛感情を伝えたことで嫌われたと思い、謝ろうとしていた。

一方彼女は僕に「恋愛感情がない」と断言したことを後悔している?

☆きらら☆> : ’NADEちゃんから、あなたが謝りに来てると聞いて、’

☆きらら☆> : ’私、いま戻って言わないといけないと思ってインしたの。’

ドラゴンが煽るように鉛丹色の空を旋回する。

火山の噴火が一瞬止んだ。

☆きらら☆> : ’私もあなたが好きです’

☆きらら☆> : ’もし許してもらえるなら、また仲良くしてください’

信じられなくて僕は画面を何度も見返した。

あきらめていた恋。彼女も同じ気持ちでいてくれていた。

嬉しくて幸せで「また宜しくお願いします!」と打ち込むのも

指が震えて時間がかかった。

渡せずにいた新作"Light Star ☆"を渡すと早速着てくれた。

☆きらら☆さんはこれを着てまた一緒に露天に立つと約束してくれた。

すべてが回りだした気がした。

一度終わった恋。僕は勢いで誘ってみた。

「よかったらマリノスVSレッズの試合観に行ませんか?」

試合はもう週末に迫っていた。

彼女がマリノス好きなのは知っていたけれど

いきなり"会う"のは断られるだろう、と覚悟しながら。

「絶対行く!」彼女は即答した。

チケット完売であきらめていたらしい。

仲直りした上、会える・・・。

顔も声も何も知らない。

リアルとネットは違うかもしれない。

でも僕はネットでの彼女を知っている。

ネットの彼女は、リアルの彼女の一部だ。

だから彼女を信じられる。会うことに躊躇いはなかった。

僕>☆きらら☆ : ’新横浜駅で待ち合わせでいいかな’

☆きらら☆> : ’了解。何か目印あるかしら?’

僕は一寸考えて

僕>☆きらら☆ : ’☆きらら☆さんがわかる格好で行くから大丈夫005

☆きらら☆> : ’あら、それは楽しみw’

彼女なら見つけてくれると確信していた。

彼女にリアルで会うまでの一週間。

それまでの空白を取り戻すように露天で並んで、話をした。

MDNを見つけるまでの経過を話すと、彼女はおりりさんに腹を立てた。

でも出会えたのはおりりさんやうっかり玉子さんのおかげだと思い直し、

2人で彼らにお礼を述べた。

momimon2ndさん、+NADECO+さんにも関係を戻すことができたと報告。

「神は言っている。ここで終わる運命ではない」momimon2ndさんが

意味深なエールを送ってくれた。

そしてサッカーの日。

新横浜駅、正面口の改札で僕は彼女を待っていた。

トリコロールカラー、トマトレッドのユニフォーム集団が

改札を通り抜けていく。スタジアム外のサポーターは穏やかだ。

肌寒さは残るが雲ひとつない秋晴れ。絶好の試合日和。

改札前で待ち合わせする人は案外多く、皆思い思いに佇んでいる。

"彼女にはわかる格好"で僕は改札から少し離れたところに立っていた。

通り過ぎていくサポーターたちの雑踏。

駅のアナウンス。ツアーコンダクターの案内の声。

腕時計を見る。約束の時間まで間もなくだった。

「こんにちは」

奏でるような声。慌てて顔を上げると黒髪の女性が前にいた。

「きららさん?」

「そうですー」彼女は口に片手を当てて笑いを堪えている。

僕の着ている服―真っ白なTシャツ―を指さしてとうとう吹き出した。

「セルフが白いです!」

彼女の弾けるような笑顔を見て、僕はなんだかいけそうな気がした。

その後バイト仲間たちと合流。

本当に彼女がいたのか・・・と目を丸くされた。

試合の後、僕は☆きらら☆さんに"Light Star ☆"の元となった服を

プレゼントした。その日から僕たちの交際がはじまった。

露天で話して、リアルで会って・・・

そんな日々が1年続いたある夜。

僕は彼女に電話した。

「いまパンヤのポストにプレゼント贈ったから見てほしいんだ」

「急になに?」

マウスを操作する音がきこえる。

「あらエリカのセルフ。新作?」

携帯から届く彼女の声が悲鳴に変わった。

「ええええええええええええええええええええええええ」

「大声出しすぎ~」

「だって!!」

Sk

「セルフでプロポーズ・・・」

「返事、聞かせてほしいんだ」

彼女はまだパニックが収まらないようで息が荒い。

「リアルでちょ・・・・って言いそうになったわ」

彼女は何度か深呼吸した後、言った。

「喜んでお受けします」

あのときセルフが白くなかったら・・・

お互い思い違いをしたまま二度と会うことがなかったら・・・

いろいろな偶然と出会いに感謝して、

僕たちはいつものように2人並んで店を出した。

WizWizの鴇色の空の下で、いつまでも。

セルフに恋して FIN

文 はるれい

表紙イラスト おりり

※ この物語はフィクションです。

※ 実在するおりりさんは転売厨ではありません。

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コメント

これかっ!!!
おりさんに無茶フリしたやつはwww

投稿: saki | 2011年1月16日 (日) 23時59分

>sakiさ
えへへ、そうなのです(o^-^o)ウレシイ

投稿: はるれい | 2011年1月17日 (月) 07時21分

表紙買いな本完成おめで㌧♪

もう書店に並んでるのかなぁ~(*ノ´ω`*)フフ

サイン会はいつかなぁ~・・・

売り上げのギャラは7:3でおりりさんの総取りとかなんとか(ゴニョゴニョ

投稿: ari☆ | 2011年1月18日 (火) 02時29分

>ありしゃ
表紙詐欺ともいいますwww
いまはネット文庫の時代なのです。
GALAXYでしか見られません(嘘
サイン考えておかないと!!
ギャラはもう9:1でおりりさにあげたいくらいだ(笑

投稿: はるれい | 2011年1月18日 (火) 07時15分

こ!これは!?
今度は、アニメ化若しくはドラマ化されるんですねww

投稿: アムゥ | 2011年1月18日 (火) 18時56分

何度読んでもいいお話だねっnote
また感動しちゃいましたdiamond

表紙も雰囲気ぴったりで素敵ですねshine

投稿: かる | 2011年1月18日 (火) 23時48分

>アムゥさ
いえ、ミュージカル化です(`・ω・´)キリッ

>かるさ
うう、ありがとう(;ω;)
読んでもらえるだけでもありがたいのに感動とか・・・
表紙最高だよね!

投稿: はるれい | 2011年1月19日 (水) 00時41分

ぉお(゚ロ゚屮)屮
まとめられてる~o(^∇^)oワーイ♪

っつーか、この表紙!
普通に書店に並んでそうですね!!
もちろん、即買いですw
100万ppは持ってませんが('ェ';)

はるさまとおりりさんのコラボ
素晴らしい!!

投稿: 真紀 | 2011年1月20日 (木) 00時26分

わー!完成したんだー (´ー`*)

おりりさまのイラスト・素敵ー♪

めっちゃ普通に書店に置いてそうで・・超リアルすぎ(笑

もちろん背表紙に・・はるさまの自画写真・・(爆

で、文庫本  How much ??

投稿: kirara 616 | 2011年1月20日 (木) 00時28分

また全部読んでしまった(ノ∀`*)+゚
+NADECO+いいやつだなぁ~w(ぁ
ってことで売り上げの一部はあたしにヨコセ(ひょえ)

投稿: ナデコ | 2011年1月20日 (木) 10時31分

どうしてこうなった…

これは同人誌にして売るしかないね!
と思ったり思わなかったりw

投稿: もみ | 2011年1月20日 (木) 18時38分

>真紀さ
ほんとにありそうな本だよね!
おりさをなだめすかして描いてもらっちゃった(o^-^o)
今回ばかりはおりさに頭があがらんよ(゚ー゚;

>kiraraさ
なぜまた自画を持ち出した~~
イラストわしもお気に入りです(*゚ー゚*)
文庫本の価格は490PPくらいかな(笑

>ナデコさ
長文読んでもらえて嬉しい~
+NADECO+いい働きしたさね!
じゃあプロポーズTが売れたらね(笑

>もみさ
一気に萌え系な小説に(*´д`*)ハァハァ
なんて間口の狭い同人誌!
次の夏コミが狙いだー(ぉ

投稿: はるれい | 2011年1月20日 (木) 23時31分

((((((((((っ・ωΣ[壁]ガコッ!

壁]*´・ω・`)ノオジャマシマスゥ♪

早速コメ・・・来ましたぁ~^^はるれいさん作家なんですかぁ?って思わず聞いちゃったアタシです!
感想は驚くばかりで・・昨日伝えた様に多才な^^はるれいさんが羨ましい限りです☆

リアリティーあるストーリーの中で想像を膨らませ・・凄く楽しく読ませて頂きました^^

 眺めていた中で見つけたひとつの服。
 心躍るデザイン。
 丁寧で・・愛のある縫製。
 シンプルだが絶妙に配されたライン。
 惹きこまれる色彩。
 その服の前から離れられなかった。

素敵な言葉が沢山あった中で・・・アタシが一番惹きこまれた言葉です(´∀`人)ステキッ♪

次回も楽しみにしてますよぉー|電柱|。´・ω・。)ゞエヘ♪

投稿: らぷぅ☆ | 2011年1月23日 (日) 10時53分

>らぷぅ☆さ
らぷぅ☆さは大袈裟すぎ~でも嬉しい(笑
連載中もいろいろコメもらえたので書き続けられたさね!

洋服も今や工場で大量生産される時代だけど
基本的にはひとつの作品なので、
作り手の愛情の感じられる洋服は魅力的だと思って
書いた文章なのだ~

ぜひまた読んでくださいねヽ(´▽`)/

投稿: はるれい | 2011年1月23日 (日) 15時02分

仕事中に読んでレスしたつもりだったんですけど、送られてないですねo( _ _ )o~† パタッ

いいお話でした♪
彼女(今は奥様w?)とずっと中よく遊んでて下さいね^^

ここぞのときには告白セルフ買わせて下さいw

投稿: シィル・シナモン | 2011年1月25日 (火) 01時39分

 (ノ*^▽^)ノ オォッ!! 完全版が出てる~
内容知ってるのに 改めて読んでもイイ話ですよねっ!!
本になるなんて・・・・素敵です(っ´∀`c)キュンキューン

投稿: エスタ | 2011年1月25日 (火) 01時44分

>シィルさ
読んでくれてありがとうヽ(´▽`)/
レスうまくいかなかったようで…申し訳なし(ノ_-。)

あはは、実話じゃなーいw
こんな展開があったらいいよね~
おう、告白セルフいつでも言ってね!!

投稿: はるれい | 2011年1月25日 (火) 01時45分

>エスタさ
わおー読んでくれてたんさね( ´;ω;`)ブワッ
少しは読みやすくなるように連載中の文章を
切って貼って修正しています~
いい話と言ってもらえて嬉しい(o^-^o)

投稿: はるれい | 2011年1月25日 (火) 01時47分

|||||/( ̄ロ ̄;)\||||||| まじ~~? 

出演料は何CPなのかな(・∀・)ニヤニヤ

まさかのハッピーエンドだった((´∀`))ケラケラ

投稿: O~G | 2011年2月11日 (金) 02時46分

>うっかりO~Gさ
読んでくれたんね(笑
玉子さんはかなり重要な位置づけで
かなり活躍してもらいました(笑
ようし10,000PPあげちゃう!ヽ(´▽`)/

投稿: はるれい | 2011年2月11日 (金) 11時44分

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